仙台へと帰ります
2日前の11月16日から始まった2018年のANAプラチナステータス獲得を含む一連の日本巡業もいよいよ大詰め。最終目的地の仙台空港へ帰る時がやってきました。
前回ご紹介の通り、今回は羽田空港から伊丹空港を経由して仙台空港へ戻るスケジュールを組んでいます。東北地方の空路では最も利用者数が多い伊丹ー仙台線、便数が豊富で機材も時間帯も選び放題ではありますが、Boeing 767に乗りたいという欲が発動し、その欲を満たすことができる便をチョイスしました。
搭乗機とご対面
今回の搭乗便は、10:00発のANA735便です。「735」といういかにも某イルカの飛行機を彷彿とさせる便名ではありますが、使用機材はBoeing 767です。
767-300で運航されるANA735便、前日は787-8で運航されるANA767便に搭乗しました。機材のような便名が付与されている、ヲタク的にはネタ要素満載な便にもかかわらず、そのような便に限って便名通りの飛行機がアサインされていないのです…
伊丹空港での乗り継ぎ時間は時刻表上で50分。短い時間ではありましたが、15便で到着後一旦ラウンジで喉を潤しつつ、スマートフォンに写真を取り込み、そして、9:30頃アサインされていた5番搭乗口へと向かいました。既に搭乗口の案内板には、735便の表示がセッティング済み。伊丹空港ではまだまだ反転フラップ式案内板が現役です。
仙台空港→伊丹空港へのフライトへは既に2回搭乗していますが、伊丹空港から仙台空港へ向かうのは今回が初めてです。基本的に日本列島を斜めに横断する航路は一緒ですが、下り便の方が、やや北寄りを飛行するとのこと。窓から見える景色も楽しみですね。
搭乗口の脇から今回の搭乗機とご対面です。
Flightraderで既にどの機体がアサインされているかは分かっていましたが、今回の搭乗機は他とは一味違います。ご覧の通り、Boeing 767-381ER(JA614A)です。この界隈の方であれば、登録番号を見るだけで、スターアライアンス塗装を纏った767であることがすぐにわかっていただけることでしょう。
このJA614A号機が、今回の一連の飛行機乗り回し行程のラストを飾ってくれます。特別塗装機であることは勿論、このJA614Aにはまだ搭乗したことが無かったため、まさにラストを飾るのにふさわしい機体であります。国際線仕様の767が国内線仕様にコンバートされるようになってから5年ほどが経過しますが、JA6xxAの登録番号を付けた767も身近な存在になりましたね。
景色を狙ったシートアサイン
9:45、搭乗となりました。今回の座席は進行方向左側、前方の9Aです。伊丹空港離陸後に見える昆陽池や伊丹空港、大阪平野に広がる景色を狙って今回はA側席をアサインしました。
伊丹―仙台線のようなビジネス路線であれば、日曜朝ともなるとたいそう空いているであろうと予想していました。しかし、その予想とは裏腹に機内は結構混雑していました。前日のANA478便と同様、空いている便であるという予測が外れてしまいましたが、こちらは後方席には幾分かの余裕があったようです。
私がアサインした前方席は完全に混雑しており、私の隣にも出張で利用していると思われるサラリーマンの方の姿がありました。通路を挟んだ9Dの方と一緒だったようで、熱心に打ち合わせをされていました。世間は休日なのにお疲れ様です…
仙台空港へ向け出発です
10:02、プッシュバック開始となりました。伊丹空港の5番スポットは奥行ったところにあるため、E誘導路に出るまで超ロングプッシュバックで押し出されます。機首の向きもほぼ180度変わるため、その辺の事情は詳しくありませんが、トーイングトラクターを運転する技術が結構必要になるのではないでしょうか?
先ほど乗ってきた777で運航される、同時刻発の羽田空港行き20便も同時にプッシュバックしている様子が見えますね。遠近法で手前のQ400と奥の777がほぼ同じ大きさのように見えてしまうのが面白いです(笑)
トーイングトラクターが外された飛行機は、滑走路へと向けてタキシングを始めます。伊丹空港に隣接するMROJapanのハンガーにはA320の姿が見えました。MROJapanも那覇空港へ移転してしまうということで、ここでこうして整備作業なんかを見ることができるというのも過去の話になるんですねえ… (※2019年1月から那覇空港に移転済み)
個人的には2016年に引退整備中の737-700ERを間近に見ることができたのが、良い思い出です。世界ではANAのみが唯一2機のみ発注した737-700ERですが、どちらも既に引退済み。航続距離を延ばすために燃料タンクを増設したり、主翼と足回りに737-800の部品を採用したりというその構造の特殊性から新たな買い手が見つからず、解体されてしまっているようです。
因みに私が737-700ERを目にしたことがあるのは、この伊丹空港と福岡空港。伊丹空港へは整備、福岡空港へは冬季間の成田ームンバイ線のテクニカルランディング先としての飛来の様子を目にしたことになります。ムンバイ線のテクニカルランディング先も、当初は長崎空港だったのがまた懐かしいですね。
10:13、W2誘導路から伊丹空港B滑走路RWY32Lにlineupしました。何度飛行機に乗っても、また、眠気があっても滑走路へと進入する時というものは緊張感があります。
一般に離陸後の3分と着陸前の8分は「魔の11分(critical 11minutes)」と呼ばれ、航空事故が最も発生しやすいフェーズであると言われています。離陸滑走中にも航空機にトラブルはつきものですので、乗客として乗っている身でも、多少はそのような心構えを持っていた方がよいに決まっています。
大阪上空空中散歩
10:14、離陸となりました。上記のようなことを意識しているとなんだかんだで無事に離陸してくれるものです。「災害は忘れた頃にやって来る」というのと同じですね。
大阪国際空港は、伊丹空港の愛称があることから分かるように、大阪府と兵庫県の2つの府県の境にまたがって位置しています。伊丹空港を北へ向けて離陸すると進行方向左側に見えるのは兵庫県伊丹市の様子。写真中央を流れるのは猪名川です。千里川の土手に並んで、この猪名川の河川敷も伊丹空港の有名な撮影スポットの一つですよね。
そして、その猪名川にかけられている橋の奥にあるのが地方民御用達イオンモール伊丹です。2018年の6月には、スカイパークでのスポッティング中に汗をかきまくってしまったので、このイオンに出店しているユニクロで服を調達したという思い出の地でもあります(笑)
離陸後はすぐに左に旋回、そして見えてくるのがご存知「昆陽池」です。池の真ん中にある日本列島が特徴ですね。勿論上から見なければ分かりませんが、伊丹空港を離陸した飛行機からバッチリ見えるのには良くできているなあ、と感心するものです。
近畿地方には同じ性質のものとして古墳もたくさん存在していますから、空から眺める景色に飽きが来ません。
今さっき離陸してきたばかりの伊丹空港と昆陽池を一緒に撮影してみました。昆陽池は伊丹空港の撮影スポットとしても親しまれていますが、こうしてみると空港周辺の撮影スポットと比較すると距離があることが分かります。
伊丹空港のRWY32Lを離陸して、左旋回中の飛行機の写真撮影には持ってこいの撮影スポットのようで、同じアングルの写真に飽きてしまったならばここでカメラを構えるのもありかなあ…といつも思っています。欠点としては、空港から離れた場所にあること、500mm程の望遠レンズが必要なことでしょうか。
そして伊丹空港の全景です。よくもまあこんな立地で空港が存続できているなあというのが率直な感想です。1994年に関西国際空港が開港するのと同時に廃港となる予定が覆り、現在に至っています。関空よりも大阪中心部に近い伊丹空港が利用者からも航空会社からも好まれるのは言うまでもありません。
伊丹空港の歴史は、太平洋戦争前の1939年にまで遡ります。当時はまだ伊丹空港周辺にこれほどの住宅地はありませんでした。しかしながら、日本の都市部の人口増加に伴い住宅地が広がり、1970年頃には早くも有名な大阪空港訴訟が起こるまでになりました。現在の秋田空港は秋田市南部の所謂「山の中」にありますが、その場所の選定理由に「空港周辺に緑地帯を設けることで、将来の住宅接近化を防ぐ」とあることから、この大阪空港訴訟は後の日本の空港整備に大きな影響をもたらした一件と言っても過言ではありません。
我がANA735便のすぐ後には、先ほど乗って来たANA15便の折り返し、ANA20便のトリプルセブンが続いているようでしたが、写真には入っていませんね…
羽田行きと仙台行きでは出発経路が異なり、仙台行きはMINAC Departureで羽田行きよりも北側を飛行します。左旋回で北東方向に進路を取り続ける必要があるため、左のエンジンの推力が下げられているように感じました。
飛行機は滋賀県南部のMINACポイントを目指して飛行を続けます。
進行方向左側の窓からは琵琶湖と大阪湾を結ぶ淀川を綺麗に見ることができました。関西の川と言えば真っ先に思い浮かぶのが淀川、関西圏に住んでいらっしゃる方であれば知らない方はいないのではないでしょうか。
航空機限界ヲタク界隈では「よど」と聞くと「よど号ハイジャック」事件を思い浮かべる方も多いように思います。1970年3月に発生したよど号ハイジャック事件、ハイジャックされたのはJALの727でした。当時JALは727に1機ずつ国内の有名な河川の名前を愛称として割り当てており、淀川の他にも石狩川、北上川、信濃川、多摩川と言った川が採用されていたようです。JALグループの飛行機は90年代に入ってからも機種ごとに何かしらの愛称を付与することが流行っていましたよね。
ここ最近は、効率化の観点から少数機種の大量導入に舵を切っているせいか、なかなか愛称の付与も難しそうです。737-800なんて50機いますからねぇ、元素の名前くらいしか割り当てることができるものがなさそうです()
琵琶湖もはっきりと見えました
そして琵琶湖が見えてきました。言わずと知れた日本最大の湖です。滋賀県全体の1/6がこの琵琶湖で占められているようで、時々テレビで「滋賀県は陸の面積よりも水の面積の方が大きい」などと揶揄されていますが、これも正直ネタで言っているのか、本当にそう思って言っているのか判別することができないレベルで上空からでもその大きさが伝わります。
飛行コースや高度によって全体を見渡すことができるか否かが変わってきますが、今回は伊丹空港離陸後間もない高度の低い段階で見えたこと、琵琶湖の南側を飛行していたことが幸いし、一応全景を見ることができました。それでも北部の方は霞んでしまっていますが(笑)
中部地方上空を横断します
10:29、飛行機は名古屋空港上空付近を通過しました。この付近で巡航高度の35,000feetまで上昇完了、10:30にはベルトサインも消えました。約2時間前も中部地方上空を飛行しましたが、その時よりも更に北側を飛行しています。
写真中央を流れるのは木曽川です。写真の右側から左側にかけて流れており、濃尾平野を通って太平洋へと注ぎます。先ほどのJALの727の愛称に話は戻りますが、木曽川も愛称の中に採用された川のうちの1つです。
この付近では羽田空港や成田空港を出発し、西へ向かう便と航空路が交錯する区間を飛行します。西行き便と東行き便では使用する高度が異なるため、ぶつかることはありませんが、反対方向へと向かっていく飛行機の姿をよく見ることができました。
10:35、キャプテンアナウンスが入りました。巡航高度35,000feetを飛行中、右手には富士山が見えること、10分後降下開始で揺れることなどが伝えられました。伊丹空港発の便で「右手に富士山」というフレーズは個人的にはなかなか新鮮でした。伊丹―羽田線ですと、左手に富士山が見えますからね。路線によって見える景色やその見え方が変化するのは乗っていて楽しいものです。
伊丹―仙台線で右側に富士山が見えている頃、その反対側である進行方向左側からは、長野県の御嶽山が見えています。御岳山と言えば、2014年に大規模な噴火が発生したのが記憶に新しいですね。私が小学生のころ、小学校の図書館に1984年に発生した長野県西部地震を題材にした本があり、その震源近くにあった御岳山で山体崩壊が発生したということで印象に残っている山でもあります。
10:47、飛行機は降下を開始しました。特徴的な形をした湖が見えたので調べてみると、新潟県と福島県の境にある奥只見湖とのこと。湖にも様々種類はありますが、こちらはダム湖だそうです。上から見てもその特徴的な形と大きさで目立つ奥只見湖ですが、2008年に岐阜県の徳山ダムが完成するまでは、日本で最大の貯水量を誇るダムだったようです。
北上してくると山々が色づいている様子がよく分かりますね。晩秋の東北地方、間もなくするとこの付近も雪で覆われ、1年の中でも最も厳しい時期を迎えることになるのでしょう…(この文章はクソ暑い真夏に作成しております。秋や冬が待ち遠しいです)
とうほぐ地方へ帰ってきました
10:52、山岳地帯上空のフライトが続いていましたが、猪苗代湖の西に広がる会津盆地が見えました。既に農耕シーズンも終わり、稲穂が刈り取られた後の裸の状態の水田が一面に広がっています。
東北地方上空に差し掛かったということでフライトも終盤戦に入ります。
10:56、安達太良山上空を通過し福島市上空に達したところでベルトサインが点灯しました。
福島に近づいてくると再び天気が回復し景色も良く眺めることができました。すぐそばには蔵王山なんてのも見えたのですが、安達太良山よりもそちらの方が標高が高いようです。
豪快なアプローチを体験しました
11:03、仙台空港が見えてきました。が、ここから先が割と長いのです。一旦太平洋上空へ大きく進路を取り、反時計回りに滑走路をめがけて降下していくというパターンです。
3月に初めて仙台空港に着陸してからというもの、もっとショートカットして飛行することはできないのか…とずっと思っていました。例外なく今回も同じようなことを考えながら、すぐそこに見えている仙台空港を視界に入れていました。
しかし、今回は少し違いました。これまで仙台空港に海側のRWY27へ4回ほど着陸した経験がありましたが、明らかに陸地が近いところで旋回している…Flightraderで確認しても、陸地から明らかに近いところで旋回している様子が見て取れました。
そしてこのままぐいぐいと左旋回を続け、飛行機は滑走路へと正対。滑走路へと向かっていったのでした。
伊丹ー仙台線で、仙台空港のRWY27に着陸する際に使用されるSTARはOWLET EAST ALFA Arrivalであると思われますが、そのチャートと見比べても太平洋沖上空に出てからの飛行経路が短縮されていることが分かりました。天候が良かったため、途中からビジュアルアプローチに変更して降りて行ったのでしょうかねぇ…いずれにせよ、シビれる左旋回でした。
無事に着陸しました
11:07、仙台空港RWY27に着陸。飛行時間は53分でした。冬が近づくと偏西風の影響を受け、西から東へ向かう便は、所要時間が短くなります。それに加え、今回のように着陸コースのショートカットを行うことができれば、より一層の時間短縮を実現することができるでしょう。もっとも、飛行機に限らず公共交通機関は安全第一ですので、無理にショートカットしろとは口が裂けても言えません。
飛行機はB3誘導路で滑走路をバケート、トラフィックの多い仙台空港ですから、早めに滑走路を空けるに越したことはありません。
11:12、仙台空港の5番スポットに到着しました。ブロックタイムは1時間10分でした。出発も到着もそれぞれ2分ずつの遅れとなりましたが、そのくらい大したことではありません。
今回はいつも通り最後の方にまったり降機、仙台空港の到着ロビーへと向かっていきました。
無事に全日程完遂しました
仙台空港の到着便案内も、出発便案内のパタパタ引退に伴い更新されたようです。到着便案内はこれ以前から液晶の物が使用されていましたが、表示方法が新しくなったようです。でもなんだかこれ、文字が小さくないですか?
更新前の方が文字が大きく分かりやすかったんですけどねえ…まあ近くに行けば見えるので問題ないと判断されたのでしょう。
国内主要都市ばかりが並ぶ出発地の並びに、一つだけぽつんと「出雲」の文字があるのが良いですね(笑)FDAの仙台―出雲線、なかなか好調のようです。
最後にデッキから搭乗機の写真を撮影して仙台空港を後にすることにしました。
こちらは搭乗機ではありませんが、なんかいたので撮っておきました。アシアナ航空のA321です。ラッキーなことにまだ撮影していないレジ番の機体だったので良かったです。何も考えずに撮影すると偶にはいいことがあるものですね。
アシアナ航空とコードシェアを行っているANAの国際線時刻表によると、2019年の夏ダイヤでは、アシアナ航空の日本線のうち、地方空港と仁川国際空港を結ぶ路線は、仙台、宮崎、那覇の3地点だけであることが分かりました。韓国のLCCが日本の地方空港にも進出し始めている中、フルサービスキャリアで地方空港路線を運航するとコスト面で不利になってしまうのでしょう…アシアナ航空で運航していた路線も、アシアナ航空系LCCのエアソウルに順次移管が進められているような印象を受けます。
そしてこちらが我が搭乗機だった767。せっかくの特別塗装機ということで、折り返し便の出発まで見届けていっても良かったのですが、こちらの機体、3月に仙台空港で着陸シーンと離陸シーンを共に撮影済みなので今回はパス。この日は撮影欲よりも断然睡眠欲が勝っていたため、そそくさとデッキを後にし帰路につきました。
最後に
今回の行程は、期待していた様々な事柄を体験することができ、有意義な3日間でした。スカイメイトで当日あてもなく飛行機に乗ってどこかへ行くのも良いですが、日程を決めて、その中で何を行うのか予め決めてから臨む飛行機ツアーの良さも改めて感じました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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