2019年4月2日 伊丹へ行く気がしない伊丹線へ乗る(ANA31便 羽田―伊丹線搭乗記) 

搭乗記2019

また伊丹空港へ向かいます

成田空港での撮影を終え、羽田空港へとやってきました。この日の最終目的地は仙台空港ですので、再び移動となるわけですが、羽田空港から仙台空港までは、ご存知のように定期便が就航していません。それではいかなる手段で向かうかというと、勿論どこかしらを経由すると言うことになります。

今回は、その経由地に伊丹空港をチョイスしました。この日の朝出発してきた伊丹空港へ再び戻るという、世間一般には理解されがたい行程をとるのも、航空ファンであればとくに気にすることではありません。約8時間ぶりとなる伊丹空港へいざ出陣です。

今回搭乗するのは、15:00発のANA31便。ANAの羽田―伊丹線の中では、まだ乗ったことがない便でしたので、今回搭乗してみることにしました。

羽田空港第2ターミナルの出発便案内板には、15:00発の便が4便表示されていました。うち3便は、我が伊丹行き31便を含め、幹線の新千歳行きと福岡行き。15:00は、ANAの羽田空港発の3大幹線が同時に出発する、数少ない時間の1つです。

まず休憩です

この日の私のスケジュールは、朝5時に大阪府内某所のネットカフェを出発、伊丹発成田行きのANA2176便で伊丹空港から成田空港へ移動、成田空港で数時間撮影、その後羽田空港へ移動というものでした。

既にこの日の稼働時間は10時間近く、その大半を機内か屋外で過ごしているとなると、自然と疲れもたまってきます。ラウンジで青汁を飲みながら頭がぼーっとし始めました。午後3時前、ウトウトして飛行機に乗り過ごす間抜けな乗客にならないよう、早めに搭乗口へ向かうことにしました。

おぬし、本当に伊丹行きでござるか?

今回搭乗のANA31便は、70番搭乗口からの出発でした。羽田空港第2ターミナルの70番搭乗口は、遠い果ての果てに位置しています。ビジネス需要と定時性が命の羽田―伊丹線で、このような保安検査場から遠い搭乗口がアサインされるのは、珍しいことです。

2006年7月14日~8月31日のANA時刻表。「運航状況により~」という備考が記載されているものの、羽田―伊丹線ではそれぞれの出発空港で、搭乗口が固定されていたことが分かる。他の路線ではこのような記載はなされていないため、新幹線への顧客流出を防ごうとする強い意志が表れているように感じる。

かつてのANAの時刻表には、「羽田―伊丹線は60~64番搭乗口、伊丹ー羽田線は9・10番搭乗口から出発します」という表記がなされていたほどです。現在の時刻表にそのような記載はありませんが、基本的に保安検査場から近い搭乗口がアサインされていることを考えると、異端である便であることがわかります。(飛行機に乗ることがなく、かつ地元民でもない人で、時々伊丹を「いたん」と呼ぶ人がいますよね。気持ちはわかります)

羽田―伊丹線では、出発の30分ほど前から、搭乗口付近に航空会社ステータス会員の優先搭乗の列が出来上がっているのが一般的です。

しかし、今回は、保安検査場から遠い搭乗口、そして、ビジネスには利用されにくい15:00発という条件が揃っています。その結果、出発時刻の20分ほど前でも搭乗者の列が出来上がっていませんでした。普段は地方路線にアサインされる搭乗口ということもあり、これから羽田ー伊丹線に搭乗するという雰囲気は少しも感じることができませんでした。

羽田ー伊丹線では少数派のA321で移動

普段の羽田ー伊丹線と異なるのは、アサインされた搭乗口や、その雰囲気だけではありません。機材も全く違います(笑)

今回の搭乗機はAirbus A321-272N(JA136A)。普段は777や787が全盛のこの路線で、座席数が200にも満たないA321に乗るということが、最も違和感を感じる原因に違いありません。

羽田―伊丹線は、伊丹空港発着の路線に機材を送り込むという役割を果たす便が複数あります。始発の985便と09:00発の17便は、伊丹ー那覇線に機材を送り込むという名目があり、これらの便に入った機材は、基本的に羽田空港へとんぼ返りすることはありません。

それらと同様、この31便に入った機材も、羽田空港へとんぼ返りはしません。今回搭乗するA321は、伊丹空港到着後、仙台空港へと向かいます。そう、実質この飛行機は、羽田発伊丹経由仙台行きとなるのです。

隣の席には「ある」方が

14:42、搭乗となりました。今回の座席は主翼後方の32Aです。羽田空港でチェックインした際に、座席指定の画面を見ると、私の隣、32Bの席は空席でした。機内に入り、出発時間が近づいても相変わらず空席をキープしていましたが、最後の最後でデッドヘッド(非番)のCAさんの一団がお出ましになられました。そしてポツリポツリと空いている座席を埋めていき、結果的に32Bの席も埋まってしまいました(笑)

デッドヘッドのCAさんと同じ便になることは珍しくありません。これまでに何度もそのような便に搭乗してきましたが、隣の席にCAさんがいらっしゃるということは初めてでした。私は膝の上にカメラを構え、手元にはヲタクのようなメモを持っている姿を晒していましたが、特に何かツッコまれるろいうこともありませんでした。

その後しばらくすると、機長からのアナウンスが入りました。出発前にアナウンスが入ることは滅多にないため、その場合は、何かトラブルが発生したか相当丁寧な機長さんなのかの大体2択ですが、今回は前者の方でした。

羽田空港上空に雷雲が発生しており、離陸後しばらく揺れが続くこと、天候次第では離陸が遅れること、そして伊丹空港上空付近も揺れることが伝えられました。搭乗口の前で出発を待っている時に房総半島の南の方で稲妻が見えたので、気になってはいたのですが、やはり雲は羽田空港の方へと流れてきているようでした。

一先ず定刻通りに出発です

出発が遅れる可能性もありましたが、結局ドアクローズは14:57、定刻の15:00に機首を西へ向けてプッシュバック開始となりました。房総半島の雲が東京へ流れているということで、風は南から吹いています。南風運用時の羽田空港から離陸する場合は、まさに今見えている雲の中に離陸後すぐに突入することになります。こんなどす黒い雲、入りたくないですねえ………

主翼先端に付く大きなシャークレットの脇に見えているのは、ANAの乗員訓練機、737-500。航空会社を引退した飛行機は、殆どがアメリカの砂漠へ旅立ち解体されたり、他社へと売却されたりしますが、まれに航空会社でそのまま訓練に使用される場合があります。以前JALでも日本初のジェット機であったDC-8を引退後10年以上に渡って地上訓練用機材として使用していましたが、ANAでも同様のことをするために、2018年に引退したばかりの737-500を丸々1機保存しています。より実践的な訓練を行うためには、実際の飛行機を使った方が良さそうなのは素人目にもよく分かります。

飛行機はR誘導路、G誘導路を経てA誘導路へ。右側の窓からはJAL系の航空会社がメインに使用する、第1ターミナルが見えているはずです。

天候の悪化が懸念された羽田空港ですが、少なくとも空港から北は特に問題なさそうな様子、雲の切れ間からも日光が差し込んできました。肝心な空港から南側は相変わらず不気味な雲が居座っていましたが、特に離陸が止められているということはなく、ひっきりなしに他の飛行機が離陸している様子が見えました。

国内線の機内Wi-Fiに関してはJALに大きな遅れを取ってしまったANAですが、それに対抗する目的から、2017年より導入が開始されるA321neoには国内線機材ながら全機に個人用モニターを装備することを発表しましていました。機内モニター装備対象となるのはA321neoに加えて国内幹線、主要ローカル線で使用される787、777も該当するとのことで、今後も順次個人用モニター装備の機体が増えていくことでしょう。

本日搭乗しているのは、予定通り全席に個人用モニターを装備して導入されたA321neoということで、こうして常にモニターで自機の位置を把握することができています。飛行中の航跡をたどることができるのは知っていましたが、地上走行の跡も見ることができるとは恐れ入りました。GPS様様ですねえ〜〜(笑)

15:14、今回の離陸滑走路、A滑走路はRWY16Rへとやってきました。滑走路の途中から離陸する、インターセクションテイクオフとなります。離陸の位置まではやってきましたが、前にはソラシドエアの737とANAの787が離陸を待っており、我々の離陸は3番目。

羽田空港の滑走路は配置が独特であるため、運用上どこの滑走路から離陸するためにも他の滑走路を離発着する飛行機に制約を受けます。RWY16Rから離陸する場合はD滑走路のRWY23へ着陸する飛行機と上空で干渉してしまうことを避けるため、次から次へと一定のペースで離陸させることはできません。

羽田空港では2019年3月末から一部の誘導路の名称が変更となり、これからまさに通過しようとするA14誘導路は、このつい数日前までA10と呼ばれていました。

雨雲を避けながら上昇します

15:16、離陸となりました。離陸後すぐにチャイムがなって車輪が格納されたことが伝えられました。あとは出発前から見えていた不気味な雲に突入していくだけです、緊張の瞬間です…

羽田空港のRWY16Rから離陸した飛行機は、通常であれば暫く滑走路方位で飛び、その後右方向へ旋回するという航路がとられます。しかし、今回に関してはその通りに飛行して、落雷も観測されている雲に突っ込んでしまっては元も子もありません。

というわけで、離陸後すぐに飛行機は右へ旋回。極力「やつ」の影響を受けないよう、管制官からも指示が出ているようでした。レーダーや先行する他の飛行機からの情報から、揺れが少ない場所を飛行するのがこういった場合の通例ですので、科学の英知を信じる他ありません。

「やつ」へと近づいていくと周りがあからさまに暗くなってきました。周囲が晴れている午後3時半でここまで空が暗くなっていますので、揺れないわけがありません。

こういった雲の中でも777や777、777といった個人的に崇拝している飛行機であれば特に気にすることもないのですが、今回の搭乗機はそれよりも1回り以上は小さいA321neo。個人的にあまりこの飛行機の揺れ方があまり好きじゃないんですよねぇ…私がそのようなどうでもいいことを考えている間にも、飛行機はぐんぐん雲を突き抜けていきました。そして、結構揺れました。しかし、予想していたよりは揺れませんでした。機体に落雷を食らう程の覚悟で乗っていましたので、離陸前にアナウンスが入るほどの揺れといった感じでもありませんでしたね。

揺れている最中に隣にはいらっしゃるCAさんの方をチラッと見てみると、本当に普通にしてらっしゃっていました。場数を踏みまくると誰でもこうなってしまうのかもしれません(笑)

15:20、雲の切れ間から千葉県の富津市が見えました。東京湾一帯が雷雲で覆われているのかと思いきやそうではなく、意外とその範囲は狭かったようです。カタカタとした揺れは続いていましたが、雷雲に突っ込んだ時ほどの上下左右に揺さぶられる揺れとは、この付近ではもう無縁でした。

上空はいつも青空です

離陸から9分経った15:25、ベルトサインが消えました。離陸から暫くはベルトサインを消灯するタイミングがありませんでしたので、やや遅めのサインオフとなりました。

一応上空には青空が広がっていますが、下界はやや雲がかかっており、景色を見るのも難しいか、と思っていると…

普段見ない景色が広がります

数分後には雲が切れました(笑)写真に写っているのは、静岡県東部の伊豆半島です。飛行機は伊豆半島の付け根付近上空を飛行していたため、その先端は遥か先に見えました。私は、この路線に搭乗する際、殆ど進行方向右側の席をアサインするため、この景色は殆ど見たことがありませんでした。普段通り進行方向右側に座っていた場合、この時点では富士山の様子を拝むことができているはずです。

飛行機は、15:28に巡航高度の22,000feetまで上昇完了となりました。東阪間は飛行機にかかれば近所も同然、あまり高度を上げてしまうと、水平飛行の時間が無くなってしまいます(笑)

そこから暫くすると、静岡県の県庁所在地、静岡市上空付近を通過しました。さらに奥には日本国内でも随一の規模を誇る漁港があることでお馴染み、焼津市の姿も確認することができました。

静岡県には、長らく民間旅客機が離発着する空港がありませんでしたが、2009年に静岡空港が開港しました。国内3大都市へのアクセスは陸路で十分という地理的特性上、国内線の就航地は限られる一方、その特性を逆手に取り、アジア路線を中心に国際線が充実しています。(得体のしれない就航地までに路線展開している点には驚いてしまいますw)その静岡空港、所在地は、牧之原市であり、静岡市ではありません。このままですと、静岡市に一生足を踏み入れることなく終わってしまいそうですので、どなたか誘って下さい()

西へ向かうにつれて、下界には雲が増えてきましたが、まだ完全には覆われてはいません。続いて見えてきたのは、様々な水産物の養殖や、潮干狩りで有名な浜名湖です。浜名湖もこれまでまじまじとその姿を見たことはなかったため、だいぶ新鮮に感じました。

浜名湖は、湖の南端付近で太平洋と通じており、湖水が海水と混じっている汽水湖の分類に区分されます。その部分には、かつて有名な今切の渡しが存在してたことでも有名です。現在も、ほぼ同じ位置を、国道1号と東海道新幹線の線路が通っています。

降下開始です

15:48、ベルトサインが再び点灯しました。サインオフの時間は23分でしたが、混雑したキャビンでも機内サービスは一通り終了したようで、CAさんのクオリティーの高さをひしひしと感じました。

眼下は雲に覆われているため、この先は、再び雲中の飛行になりそうです…

伊勢湾を横断し紀伊半島上空へと差し掛かると、再び分厚い雲が行く手を阻むようになってきました。出発前にキャプテンアナウンスで「伊丹空港へ到着する前も揺れる」と伝えられたように、ところどころ揺れながら高度を下ろしてきました。

15:53には、CAさんにも着席の指示が出されました。この先も揺れが収まる見込みがないことを、暗に示唆するアナウンスです。Flightrader24によると、我がANA31便の先を行く飛行機は、秋田空港発のJAL2174便、E190のようでした。搭乗しているA321よりもさらに小さな飛行機でさえ突っ込んでいく雲であるとわかると、心なしか少しだけ不安が払しょくされたような気がしました(笑)

進行方向左側を抑えたい伊丹アプローチ

例の分厚い雲を突っ切ると、再び下界の姿を視界に入れることができました。相変わらず、雲のおかげで遠くを見渡すことはできませんが、この先は雲につかまることなく伊丹空港まで向かうことができそうです。

更に伊丹空港へ近づき、大阪城を左手にさらに高度を下げていきました。既にフラップも下がり、ギアも下りた状態。着陸への準備が整っている様子が機内からもよく分かりました。

いつも以上に既視感のあるこの風景、つい24時間ほど前にも全く同じ場所を飛行しているわけですから当然です。前日に引き続き、伊丹空港へ4月2度目のアプローチ。前日は、IKOMA WEST ARRIVALでしたが、今回は東側から伊丹空港へ向かっているため、IKOMA EAST ARRIVALとなりました。

淀川を通過し、着陸滑走路のRWY32Lへはあと約5マイルのところまでやってきました。ここまで来るとあと数分で着陸です。

大阪平野上空に入ってからも、断続的な揺れは続いていましたが、それに加え、飛行機の高度がなかなか下がらないためか、機首が普段以上に前傾していたのが印象に残るアプローチでした。着陸間際になっても、お尻がやや前に滑るような感覚があり、それに加え、主翼が思いっきり斜めになっているというのはなかなかです。

国内線機材へのシートモニターの設置には賛否両論ありますが、飛行機マニア的視点で考えると、やはり「これ」がメリットですよね。前方を映し出すカメラの映像をいつでも、好きな時にモニターに映し出すことができるのはありがたいです

最近は、機外カメラを搭載しているであろう機体に乗っていても、必ず着陸前にその映像がモニターに映し出されるわけではありません。伊丹空港へは777で着陸することが多いのですが、その着陸シーンのカメラ映像はあまり見た記憶がありません。なかなか迫力があったんですねえ……

16:05、伊丹空港RWY32Lに着陸しました。羽田空港からの飛行時間は50分でした。離陸直後から揺れまくり、伊丹空港着陸前も気流が悪く、朝の伊丹ー成田線とはうって変わってなかなかスリリングなフライトでした。

そういえば、前日(4月1日)のANA31便は、落雷を食らったようで、次の便が欠航になってしまったようです。今回はそれよりはマシかもしれませんね。

この後は滑走路をバケートし、6番スポットへ向かいました。(6番スポットに到着する羽田便もレアですよねw)到着後、隣にいらしたCAさんから声をかけられ、しばらく飛行機トークに華が咲きました。こういった機会でなければ、関係者とお話しすることもありませんからね。様々グッズなどもいただいてしまいました。ありがとうございました(笑)

飛行ルート概要

今回の飛行ルートは以上の通りです(Flightrader24より)。航空無線を聞いていると、羽田ー伊丹線の場合、離陸後しばらくでKAGNAポイントやIBENOポイントまで直行の指示が出されているのをよく耳にします。一方今回は、それよりさらに西のTOHMEポイントまでまっすぐ飛行、その後伊勢湾上空、紀伊半島の付け根上空を通過して伊丹空港へ向かうという流れでした。

羽田空港離陸後、すぐに右に旋回したり、強く揺れる雲につかまったりと、アトラクション感がm満々のフライトでしたね。

最後に

以上、ナローボディー機で飛ぶ、羽田―伊丹線の搭乗記でした。通常時とは様々異なる点が多く、大幹線の羽田―伊丹線らしさはやや薄れているように感じました。

2020年3月29日~6月30日のANA時刻表。772、78P、76Pといったワイドボディーが並ぶ中、「321」の表示が1往復のみ出ている。

この路線特有の殺伐感を回避したい、777や787に飽きたので別の飛行機に乗りたいという方には、A321で運航されるANA31便がおすすめです。(復路では伊丹空港を11:00に出発するANA22便にA321がアサインされています)

最後までお読みいただきありがとうございました。

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