2019年9月18日 ANA183便搭乗記② A380のキャビンへ潜入 

搭乗記2019

A380の機内へ初潜入

あまりに写真の枚数が多かったため、搭乗前と搭乗後で分割している今回のANA183便搭乗記ですが、今回はいよいよA380の機内へと潜入します。世界最大のA380が初就航したのは2007年の10月でした。それから11年と11か月を経てようやくその機内へ足を踏み入れることができました。

取り敢えずその巨体についておさらいです。これから搭乗するのはANAのA380の2号機、JA382Aです。今年の5月18日に日本に到着し、その1か月後である6月18日より定期便に投入されている飛行機で、ちょうどこの日で就航3か月を迎える新品です。と、あたかも就航日まで記憶している熱心なファンを装っていますが、航空界の権威、月刊エアライン様のツイートから情報を入手したことも合わせてお伝えしておきます。(https://twitter.com/ikarosairline/status/1140953190617120768?s=20)

今回はL2ドアから機内へと入りました。早速目に入るのはこの看板です。看板という表現が適切なのかは分かりませんが、黒地に”ANA Inspiration of JAPAN”のロゴがカッコよく掲げられています。このようなものを設置するスペースの余裕っぷりがA380の大きさをまた感じさせられました。同じANAのエアバス機でもA321やA320にはこのようなスペースの余裕なんてありませんからね(笑)

11:08、自席にたどり着きました。今回の座席は進行方向右側最後尾の76Kです。窓からの眺めはこのような感じ、A380は主翼の先にウイングチップフェンスを有しているのが特徴の一つに挙げられますが、そのサイズが大きいため、そこにもANAのロゴが入っています。またA320との比較となりますが、2007年まで運用されていたA321-100や現役のA320ceoのウイングチップフェンスは小さくてロゴを入れる余裕などありませんから、ここでもA380の大きさをまじまじと感じることになりました。

足回りはこのような感じ。往路でビジネスクラスに身を委ねていたせいか、心なしか一層狭く感じてしまいましたが、まあ今回は日中便ですので特に気にする必要もないでしょう。

シートポケットはご覧の通り機内誌やらリーフレットやらでいっぱいです。それでも望遠レンズを入れる余裕はありました。大きなポケットの他にも小物入れが2か所あり、スマートフォンやらその他小物類はそちらに余裕で収納可能です。

右側に見えているのは、前の座席の方のクッションなのですが、国際線の座席って毛布やらクッションやら、物がやたらめったら多いですよねえ。ビジネスクラスであれば上の棚を1人で独占することができたので、使わないクッション類は全て収納してしまうことができたのですが、エコノミークラスであれば、複数人分の荷物を収納した上、複数人分のクッションも収納しなければならず、収納に困ってしまいます。結果として、このように置ける場所に置いてしまおうの精神で頑張るしかないのがエコノミークラスの辛いところです。

ANA’s A380のライバル現る

出発を待っていると、我がA380の実質的なライバルに当たるであろう”JAL ARASHI HAWAII JET”がトーイングされてきました。ANAがこのような巨体をいきなりJALの牙城であるホノルル線に投入するものですから、JALとしては強力な同志である嵐の皆さんに力を借りようというわけです。

ハワイと嵐というのはこちらも繋がりが強く、1999年に嵐がデビューの発表をした場所がまさにこのハワイなのです。デビュー15周年の際にはハワイでライブを行ったということもあり、デビュー20周年に当たる今年もハワイでライブでもやるのか?と期待させるような塗装ではありますが、その予定は今のところはないということです。

これまでの嵐ジェットは国内線仕様のB777が決まって割り当てられていたため、ここにきて国際線仕様のB787-9となると撮影に難があり困っていたのですが、まさに今回の嵐ジェットにふさわしいホノルルで捕獲することができるとはラッキーでした。

後方でも圧迫感のない広々としたキャビン

機内最後尾からの眺めはこのようになっており、あまり機内後方という雰囲気ではありません。B777のような大型機でも、機内の後方では機体の形状に倣ってやや機内が尻すぼみになりますから、座席のアブレストも減らされますが、A380の場合は最後尾まで3-4-3の10アブレストが維持されています。そのため最後尾でも広々とした印象を受けるのかもしれません。

カウチシートのご案内

ANAのA380は、その就航自体に話題性のある飛行機ですが、機内仕様にも話題性のある設備が用意されています。その筆頭に上がるのは、ANAの飛行機では初めて採用されたカウチシートです。ANAではA380のエコノミークラスの最後部、6列60席をカウチシートとして販売しており、座席としては60席用意されてはいるものの、その座席の塊ごとに18組に分けて販売しています。そのため、1人で使用する場合はエコノミークラス運賃に¥59,000の加算運賃、2人で使用する場合は¥19,000の加算運賃、3人で使用する場合は¥9,000の加算運賃を支払った上で利用することができます。(3-4-3のうちの3人掛け席利用の場合。4人掛け席、繁忙期は加算運賃が異なります)

カウチシート最大の特徴は、足元のフットレストを座面と平行になるまで引き上げることで、面積は狭くとも一部フルフラットの座席を作ることができる点にあります。さすがに大人2人が横になることができる余裕はありませんが、長時間ずっと同じ姿勢で座りっぱなしの状態よりは、多少楽な姿勢で移動することができるというメリットも大きいです。

というわけで、出発準備中に担当のCAさんがカウチシートの操作方法を説明する動画をシートモニターで見るようにと案内してくださいました。

その紹介動画を見て初めて気が付いたのですが、ひじ掛けについているリクライニングボタンが2つに分かれています。それぞれのボタンのうち、青くなっている部分を稼働できるようになっており、左側が背もたれを、右側がフットレストを調節するボタンになっています。

いざ滑走路へ

11:26、セットスライドバーの業務連絡が流れドアクローズ完了。11:30に定刻通りプッシュバック開始となりました。ここまでは帰国するという実感があまり湧いていなかったといいますか、そもそもハワイにいるという実感さえもあまりなかったわけですが、”セットスライドバー”の声を聞いて何だか現実に引き戻されたような感覚になりました。相当ANAに毒されているに違いありません。何しろこれで9月は9レグ目、そのうちANAでは8レグ目ですから、体が慣れ切っているのも仕方がないのです。

プッシュバックを終え、滑走路へ向けて移動を開始すると、空いたスポットには既にハワイアン航空のA330が入っているのが見えました。ダニエル・K・イノウエ空港の忙しさが垣間見えました。

滑走路への移動中は、機内の照明がレインボー照明になりました。2011年に導入されたB787で一躍有名になったこの照明ですが、A380でも採用されたようです。ただ、このA380の場合は、一応ホノルル線専属ということもあり、虹もハワイ仕様にアレンジがなされています。日本での虹は7色ですが、ハワイでは虹は6色となっています。それに合わせ、このA380のレインボー照明も黄色、青色、緑色、赤色、橙色、紫色の6色なのです。何故ハワイの虹が6色なのかはググってください()

2019/09/18 PHNL ATN B767-323ER BDSF N395CM

他の空港よろしく、ダニエル・K・イノウエ空港の旅客ターミナルの脇には貨物ターミナルがあります。そこに駐機していたのはAir Transport InternationalのB767フレイター。こちらも日本ではなかなかお目にかかることができない代物であります。

ホノルルの空の玄関としての役割が専ら有名なダニエル・K・イノウエ空港ですが、米軍のヒッカム基地が併設されている共用空港でもあります。あたかも、前から知っていたような言いっぷりですが、この米軍機を見て初めて知りました(笑)

そしてこの飛行機、単に”米軍機”で片づけてはいけないのは言うまでもありません。B707(に似た軍用機)じゃないですか!エンジンこそ初期のJT3Dではありませんが、アイデンティティーである尾翼から伸びたアンテナがもうそそりますねw

空港の駐車場からはB737-200を見ることができましたし、最後の最後には旅客機ではないにせよ、B707(に似た軍用機)をみることができ、なんだかんだで大収穫のホノルル紀行だったのではないでしょうか。

RB誘導路からRWY8Rへ向けてタキシングを続けます。窓からは遠くまで続くエメラルドグリーンの海、これは沖縄とはまた違った景色ですよ。これは離陸後の景色にも期待が膨らみます。

垂直尾翼備え付けのカメラから見る離陸シーン

それから暫く、RWY8Rへline up完了です。リーフランウェイと呼ばれるこの滑走路は、空港の中では最も沖合にある滑走路で、長さは堂々の12,000feet、フィートだとわかりにくいのでメートルに直すと3,657mです。日本では関西空港のA滑走路や中部空港の滑走路と同等の長さがありますので、A380でも余裕で離陸することができます。

A380には胴体前方のカメラだけでなく、垂直尾翼にもカメラが備え付けられており、こうして映像をモニターに映し出すことも可能です。高い位置にあるこのカメラからの眺めも抜群によく、エンターテインメントの一部としても十分に機能している一品です。

11:48、RWY8Rから離陸となりました。いくら満席と言えども、エアバスが定める標準座席数よりは座席数は少ないですし、4発の信頼のおける()ロールスロイス、Trent970が装備されていますから、楽々上昇していくんだろうなあとは思っていました。しかし実際はそうではなく、本当に重そうに離陸していきました。エンジン音も簡単に表現するなら”よっこらせ”と言う言葉が一番似合っていたのではないかという感想を持ちました。

離陸後は大きく右に旋回し…

180度旋回したところで旋回終了。進行方向右側からは再びオアフ島の姿を見ることができました。そういえば、ダニエル・K・イノウエ空港の全景をこれまで見ることなくここまでやってきましたが、全体を俯瞰すると意外と大きいですねえ…だてに陸上だけでも滑走路が4本あるだけあります。

離陸後5分で飛行機はオアフ島最西端の南上空を通過しました。これにてオアフ島と本当におさらばです。2日間お世話になりました。

上昇中はそこそこ揺れが続きました。往路の上昇中のように雷雲のすぐそばを通過し激しく揺れるということはありませんでしたが、なんとも言えない揺れが暫く続きました。そのような中でも離陸後9分でベルトサインが消灯、機内サービスが始まりました。

ハワイ諸島を後にすると、あとは日本までひたすら洋上飛行が続きます。早速リクライニングやテーブルの使用許可が出たのでフットレストを稼働してみました。まあ大体のフットレストであればここまでは自動的に稼働しますが、ここはANAご自慢のカウチシート。この状態からさらにフットレストを手で引き上げることで座面と同じ位置までフラットな部分を作ることができます。

その様子はまた後ほどご紹介するとして、まずはシートポケット内部の冊子、リーフレット類のご紹介。

まずは安全のしおりから。機種名が入っている部分には白いハイビスカスでしょうか、南国植物らしきものがあしらわれており、ホノルル線に特化しているなという印象を受けました。本当にホノルル線以外に投入する予定はないのでしょうか、接近ダイヤで運航している他の路線でも十分活用することができそうな気もします。もっとも、安全のしおりをはじめ、機内仕様は他の路線にはあまりふさわしくないのは言うまでもありません(笑)

安全のしおりの他にも、機内誌、機内販売の雑誌、サービスガイド、Wi-Fiの案内を書いたリーフレットが入っていました。そして一番左に写っているのは、カウチシートの使用方法が書かれたリーフレットです。座席モニターでも使用方法の説明動画を見ることができますが、このリーフレットでも使用方法を知ることができます。特にカウチシートを使用する場合は、特殊なシートベルトを取り付ける必要があるため、その点の説明書きをよくチェックすることは欠かせません。

カウチシートで遊んでみた

取り敢えず細かい説明はさておいて、早速フットレストを全て上まで引き上げカウチシートを完成させましたので、様々姿勢をとってみました。

まずは足を伸ばしてみました。さすがに体を正面にしたまま伸ばすことはできませんので、完全に斜めになってしまいました。3人掛けの席で1人が足を延ばすとほぼ2席分は必要になってしまいます。まあ国内線の普通席を想像すればわかりますが、3人掛け席を2人で使用し足を伸ばしたい場合は、交互に仲良く譲り合いの精神をもって使用するのがベターでしょう。譲り合いの精神も高めさせてくれるのがカウチシートの魅力であると気づかされました←

胡坐をかくとかなりスペースを有効活用することができます。これであれば、将棋やオセロなどのゲームを持ち込んで時間を潰すこともできてしまうように思います。飛行機にボードゲームを持ち込んで機内で遊ぼうとする方はいらっしゃらないと思いますが、このカウチシートであればそれも容易に行うことができそうです。

最後は正座です。我が家にはソファーなる文明品が無いため、基本的に正座で過ごしているのですが、まさに実家のような安心感を手に入れることができた姿勢でしたね。このくらいであれば、カウチシートでなくともできるのかもしれませんが、少なくとも座り心地に関してはフルフラット状態の座席の方が各段に勝るはずです。普通席で正座をしたことが無いのでわかりませんが、正座をしても違和感がないこと自体がカウチシートのメリットかもしれません(笑)

最後にと言っておきながら忘れていました。勿論ちゃんと寝ましたw

と言っても足を伸ばすだけで限界であるにも関わらず、余裕をもって横になることなどできず、胡坐をかいている父の膝の上に足をのせてようやく横になるという状態を作った、という表現の方が適切だと思います。少なくともカウチシート利用客の中では行儀の悪い客ワースト5には入っていたでしょう()

因みにカウチシートで横になる場合は、体を通路にはみ出さないようにすること、頭部は通路側ではなく窓側に向けて寝ることなど用法をよく守って利用するようにしましょう。

カウチシートを俯瞰するとこのようになります。(散らかっているのはご愛嬌です)

確かにこの座席を買わずとも、運よくエコノミークラスで横並び3席、あるいは4席を独占することができれば所謂エコノミーベッドを作ることも可能ではありますが、カウチシートであれば座面から転げ落ちる心配もありませんし、そもそも横になること自体が想定された使用方法の一つですので、他人の目を気にすることなく堂々と寝ることも可能です。カウチシートには、前述の通り、クッションとしても使える枕や毛布などが用意されており、ベッドメイキングした上で使用することもできます。今回は面倒だったのでベッドメイキングはしませんでしたが、中にはしっかり毛布を敷いて睡眠をとられている方もいらっしゃいました。

機内食の時間

離陸から1時間でまずはドリンクとおつまみがサーブされました。A321neoのテーブルよろしく、テーブルは2つ折りとなっており、展開すると十分な広さになります。

ドリンクは往路同様パイナップルジュースをオーダーしました。ビジネスクラスで提供されていたものと味は勿論同じでしたが、コップはグラスではなくプラコップに格下げされていました。エコノミークラスにそこまでのサービスを求めてしまうとただのクソ客となってしまうので、このような発言も慎みたいところです。

おつまみがサーブされてから機内食が出てくるまでは時間があります。せっかく飛行機に乗って、窓側の席をアサインしたのですから時々こうして窓の外を眺めるわけですが、あいにく雲に視界を阻まれ、フライト序盤は青空どころか海さえ見せてくれませんでした。

離陸後40分でキャプテンアナウンスが入り、14:25に到着予定、ところどころ風の変化により揺れること、成田空港の天候は曇りで26度であることが伝えられました。そのようなことよりも印象に残っているのが、キャプテン自ら”本日はカイくんにご搭乗いただきありがとうございます”とおっしゃられていたこと。カイくんとは言うまでもなくこのJA382Aにあしらわれているウミガメの愛称なわけですが、まさかキャプテンアナウンスでその名前を聞くことになるとは思いませんでした。もしかしてANAのスタッフは皆さんA380のそれぞれの愛称を覚えるように通達でも出ているのかと勘ぐってしまいました。

そして帰りの機内食です。メインは海老と野菜の天丼です。チキンカレーと選択することができたのですが、ここでも日本らしい食べものを選んでしまいました(笑)

他に、マカロニサラダ/スパムハム/チェリートマト/ブラックオリーブ/グリーンリーフ/イタリアンパセリ(手前真ん中)、ひじき煮/厚焼き玉子/枝豆(手前右側)、サラダミックス/人参のジュリアンヌ(奥真ん中)、うどん/海苔/山葵(奥右側)という布陣。占めて920kcalです。プレミアムクラスの機内食よりも庶民的で、”何を食べてるか認識して食べる”という基本的なことがしっかりできたのが良かったですね。何を言っているのか自分でもよく分かりません()

ところどころで感じる超大型機らしさ

食後のお手洗いに立ったついでに機内後方の探検もしてみました。A380は機内再前方と機内最後方にメインデッキとアッパーデッキを行き来する階段が設けられており、最後方の階段はこのようになっています。階段の幅そのものはB747-400のそれに近いものがありますが、直線になっていないのがアッパーデッキへの潜入欲を一層そそらされます。飛行中は階段の手前にバーが設けられ、基本的に乗客の行き来はできないようになっているようでした。時々CAさんが移動する際にバーを外して通過している様子が見られました。

ダニエル・K・イノウエ空港では、アッパーデッキに接続するボーディングブリッジは基本的にラウンジ利用者のみの利用となるため、一般のプレミアムエコノミークラスを利用する方は、メインデッキのボーディングブリッジから機内へ入り、機内を延々と進み、この階段からアッパーデッキに向かうという導線のようでした。

ANAのA380で特徴的なのは、カウチシートの他にもこの床が挙げられます。飛行機の機内で木目調の床は初めて見ました。こんなに大きなキャビンでこの床を見せられてしまうと、飛行機に乗っているという感覚がさらになくなってしまいます。

さすが開発段階の時点から、バラエティー番組で”空飛ぶホテル”と言われていただけあります。中東の某お金持ちの航空会社ではシャワールームまで併設しているというくらいですから、詰め込み仕様にする方が逆に勿体ない飛行機なのかもしれません。

そしてお手洗いはこちらです。さすがに便所で他の航空会社と差別化を図るくらいなら他の部分に投資をした方が良いと判断されたのか、お手洗いはいたってシンプル。まだ就航してから数か月しか経っていない飛行機だけあって、お手洗いは清潔感に満ち溢れています。これはA380に限った話ではありませんが、個人的にはLED照明を用いている最近の飛行機の方が一層清潔感を感じることができます。白系統の色がなんだかんだで一番です。

中間席のモニターの有効活用

今回は76H、76J、76Kの3席を2人で利用していたため、中間席の76Jのモニターには常に機体姿勢や、高度、速度を表示させていました。巡航高度は38,000feet、対地速度は540ktsということで、偏西風に逆らう向きで飛行している割には比較的速度が出ている印象です。これが冬場ともなるとまた変わってくるのかもしれませんが、夏場であればあまり偏西風の影響を受けずに飛行することができるのでしょう。

画面の下側には、残りの飛行距離も表示されています。この時点での残り飛行距離は4,317km、日本列島が全体で約3,000kmですから、それとあと少しの距離と考えると意外とすぐ着いてしまうように感じてしまうのは、航空界隈ヲタクあるあるの逝かれた距離感覚がそうさせているに違いありません。

往路は深夜便ということもあり、機内食後の機内サービスは控えめだったのですが、今回は昼間の運航便ともあって、ドリンクのお替りにCAさんが伺ってきました。

機内食の際にはプラコップでドリンクが提供されましたが、この時は紙コップで提供されました。見慣れた”ナビタイム”ロゴ入りの物ではなく、ハワイ線限定と思われるこちらの紙コップ、どれもデザインが統一されており、流石の一言に尽きます。

日本時間の19日09:01、ホノルルを離陸してから2時間13分が経過しました。ここまで巡航高度38,000feetで飛行してきましたが、飛行機はここから高度を上げて40,000feetで巡航となりました。

高度が高い方が空気抵抗が小さく、燃費が良くなるというのは有名な話です。離陸後は燃料が重く高い高度を飛ぶことができませんが、暫く飛行し燃料を消費すると、その分機体重量が軽くなるため高い高度を飛ぶことができるというわけです。もっとも、上空の風向、風速、気流の良し悪しなど他にも高度を選択する判断材料は多々あるとは思いますが、基本的に長距離国際線は目的地に近づくにつれ巡航高度を高めているイメージです。

超人気商品、ホヌいぐるみを買う

せっかくのA380初搭乗でしたので、A380限定のホヌいぐるみ、カイくんver.を購入しました。(キャプテンアナウンスでも名前が呼ばれていたので覚えてしまいました)1点¥3,000でした。

ご存知の通り、ANAのA380は1機ごとに異なるデザインを纏っており、それぞれのウミガメに愛称が付いています。このぬいぐるみもそれに合わせ、1機ごとに異なるぬいぐるみが用意されています。しっかりと手の部分にはエンジンのようなものが取りつけられており、可愛い顔をしておきながら海の中では爆発的な速度で移動する、そのようなギャップ萌えが好きそうなコアなファン向けの商品となっています。

そのコアなファンが多いためか、このぬいぐるみは人気商品であると伺っていたため、出発前にCAさんにオーダーしていました。A380就航当初は飛ぶように売れていたというホヌいぐるみですが、ここ最近はその開業需要のようなものも落ち着いてきたようで、在庫も十分あるとのことでした。

※ホヌいぐるみとは勝手に筆者が命名しただけですので、フォーマルな場では”ちゃんとした”名前で呼んであげてください。

暇を持て余し機内探索

それにしても昼間の洋上飛行はやることがありません。機内の探検に出ることにしました。

まずはメインデッキ、エコノミークラス最前方の部分。飛行機の客室部分の最前方は、ギャレーやラバトリーと座席を隔てる壁があるのが一般的ですが、ANAのA380のエコノミークラス再前方はそのような壁もなく、まさかの”お見合い席”となっていました。この光景はなかなか新鮮です。ドアの前にも仕切りの壁がありませんから、ここは非常口座席扱いとなります。こちらは進行方向右側ですが、進行方向左側も同じようになっており、同じく非常口座席となっています。

機内最後方にもメインデッキとアッパーデッキを繋ぐ階段があるとご紹介しましたが、勿論A380の中でメインとなる階段は機内最前方にあります。この写真を飛行機に疎い方に見せ、”これ飛行機の中で撮ったんだよ”と言ってもなかなか信じてはもらえなさそうです。その辺の雑居ビルの内階段よりも立派な階段がA380には用意されています。

機内最後方の階段はまだジャンボのそれに近い印象を受けましたが、こちらに関して全くの別物です。これが一部2階建ての飛行機と総2階建ての飛行機の違いなのでしょうか…

階段の脇には座席番号を示す表示が出ています。ジャンボの場合はメインデッキから若い座席番号が振られ、アッパーデッキは座席番号71番から86番までが割り当てられていましたが、A380の場合はその逆、アッパーデッキに若い番号が振られ、メインデッキの最前列は座席番号35番からスタートします。これに関しては、ファーストクラスに若い座席番号を振ろうという考えが根底にあるに違いありません。

因みにJALが国内線クラスJのサービスを開始した当初は、クラスJシートが機内最前方に設置されているにもかかわらず、クラスJ区画の座席番号は81番から始まっていました。現在は若い番号に改められていますが、座席番号の振り方にも様々あることが分かります。

これはどこにあったか忘れてしまいましたが、エアバスのロゴマークが機内のどこかに掲げられているため、暇な方は探してみてください。ANAやハワイ成分が満載の機内ですが、唯一”あ、この飛行機はエアバス製だったな…”とふと我に返させてくれます()

ここで今回搭乗のA380について少々ご紹介。エアバスは今でこそボーイングと世界を二分する大型機、中型機航空メーカーの1つですが、航空機メーカーとしては後発組に当たります。1970年代にA300で初めて民間航空業界に殴りこみ、その後もA310、A320、A330/340と次々に市場に製品を投入してましたが、エアバスには大型機の製品ラインナップがありませんでした。ボーイングにはB747という大型機があり、それは同時に世界で実質唯一の大型旅客機でしたので、世界の主要航空会社はこぞってB747を採用していました。

そこでエアバス社も大型機市場に参入しよう、ジャンボの市場を獲得しようと開発されたのが後にA380のモデル名が与えられるA3XXでした。当初の計画段階から総2階建てで、完成すればB747を上回るキャパシティーを誇る飛行機となる予定でした。(実際そのようになりましたが)

初期の構想から16年を経た2005年、A380は初飛行を迎えますが、その後すぐに商業運航に入ることができたかと言えばそうではなく、B787をはじめとする新型機材あるあるの様々な問題に対処するうちに、初の商業運航は初飛行から2年が経った2007年となりました。A320やA330、A340は初飛行から1年強で運用開始となっていますが、A380の場合は初飛行から運用開始まで2年半かかっています。世界初のA380商業運航を行った航空会社はシンガポール航空で、翌2008年の成田空港開港30周年の日に合わせ成田空港にも就航を開始しました。(この日の成田空港は悪天候で、就航初便が中部空港にダイバートしたことは記憶に新しいところです)

その後も中東の某お金持ちの会社などが積極的に導入を進めた結果、初就航から12年を経た現在でも世界最大の旅客機として高需要路線を中心に世界中で運用されています。しかし、頼みの綱であった中東のお金持ちの会社が発注分をキャンセルしてしまったことで、2019年春に新規発注分がなくなり、エアバスはA380の生産打ち切りを決定しました。最終的に発注された機数は251機と、航空機としては成功したとは言い難い部類に入りますが、それでも航空機界隈に与えた影響は大きく、単純に受注機数のみで図ることができないのがこのA380という飛行機だと思います。(参照:https://www.businessinsider.jp/post-185371)

因みにANAは現在のところ、A380を新規発注し運用開始した最後の航空会社となっています。2008年の月刊エアラインに”ANAがA380を含めた大型機の発注を検討している”という記事があり、ANAにとってもA380発注検討を行ったのが今回が2回目となります。今回は最終的に3機導入という結論に至ったわけですが、発注機数の少なさが今後のA380の進退を決める1つの要因にはなりそうです。

そんなところで現在も世界最大の旅客機として名を馳せている飛行機だけあって、ラバトリーの数も爆発的に多いです。ANAのA380では機内全体に16か所もラバトリーがあり、座席数ではA380の次点となるB777-300ERのそれと比較すると5か所も多く設置されています。この写真はメインデッキのNo.3ドア付近の区画なのですが、ここだけでラバトリーが4か所も密集して設置されています。

細かい数字をCAさんに伺ったわけではありませんが、メインデッキのエコノミークラスを見渡す限りでは殆どの座席が埋まっていました。9月の普通の平日でこの状況ですので、成田ーホノルル線でA380を1日2往復投入しても、ハイシーズンやレギュラーシーズンであれば取り敢えず座席を埋めることは容易にできる気がします。

機内では、ANAの技術系のスタッフさんが作業している様子も見られました。ドア付近で端末を片手に、素人目には何をされているのかよく分からない作業でしたが、就航間もない機体だけあって、社内でも様々思考錯誤しながら機内サービスの一層の向上や安全性の向上に努めている様子が見て取れました。

2014年の3月以来、5年半ぶりに4発機搭乗となった今回のA380での空の旅。4発機と言えば、主翼前のドアから片側2発のエンジンを写真に収めるのがお決まりのパターンです。この写真は確かR2ドアから撮影したのですが、脱出用スライドのふくらみでドアの窓にあまり寄ることができず、仕方なくライブビューモードで撮影を敢行しました。このような写真を撮影するには、機内前方の窓側席を予め押さえておくのがいいかもしれません。

A380のエンジンはロールスロイス Trent970と、エンジンアライアンス GP7200の2つから選択することができます。超売れっ子のB777-300ERがGE90の独占供給であることを考えるとなかなかA380太っ腹じゃねえか、と思ってしまわざるを得ないのですが、航空会社にとっても選択の余地がある方が良いに越したことはありません。ANAにとってはL1011トライスター、B787に次いでロールスロイス製エンジンを採用したジェット機としては3番目の飛行機となりました。3度目の正直、エンジン関連のトラブルに巻き込まれないことをお祈り申し上げます。

2回目の機内食は軽食の提供

日本時間の19日12:30頃、成田空港到着まで残り2時間ほどとなったところで軽食がサーブされました。ハワイ時間に直すと17:30ですので、まだ食事には早い時間ということもあり、この程度の食事で十分でした。長距離国際線で出発地の時刻、目的地の時刻どうのこうの考えているときりがありませんが、このようなことを考えること自体、海外に不慣れであるということなのかもしれません。

それにしても乾燥した機内で食べるみずみずしいフルーツは美味しかったですね。フルーツ最高であります。

成田空港へ向け降下開始

ホノルルからここまで6時間以上にわたって稼働し続けてきたTrent970エンジンも間もなくお勤め終了の時間が近づいてきました。日本時間の13:31に巡航高度の40,000feetから飛行機は高度を下げ始めました。

雲に再び近づき、着陸が近いことを実感します。雲の中で一瞬だけ機体が煽られたような揺れ方をしましたが、それ以外は揺れもほとんどなく安定した飛行で成田空港へと向かっていきました。

例の飛行状況を示すマップにも、日本列島の姿が映し出されました。残りの飛行距離は192km(119miles)と出ています。ここまで4,000マイル近い距離を飛行してきた身からすると、119マイルなど屁でもありません。このモニターには表示されていませんが、モニターの下に備えつけられているリモコンには、常時残りの飛行時間が表示されていました。

帰ってきました。(真顔) 日本時間の13:56、千葉県銚子市が見えてきました。

私は成田空港到着便で帰国するのは初めてなのですが、普段よく成田発着の太平洋路線を利用されている方は、銚子市の利根川河口を見て帰国を実感するのでしょうか…なかなか日本列島の端にある場所って感慨深いものがありますよねえ。

前回シンガポールに行った際は、沖縄本島の上空通過をもって帰国を実感しました。残り飛行時間が2時間近くもある場所で感じる帰国と、残り飛行時間が10数分程度のところで感じる帰国はまた違った感覚になりました。

14時代の成田空港は、国際線の到着ラッシュの時間帯となります。空域も混雑する時間帯ですので右へ左へ誘導されながら成田空港を目指していきます。

14:02に九十九里浜上空から千葉県上空に入りました。座席のモニターをマップから垂直尾翼備え付けのカメラ映像に切り替えこちらの着陸準備も完了、カメラには既にこれから向かわんとする成田空港の様子も微かに見えていました。成田空港は北風運用、着陸滑走路はRWY34Lです。

成田空港は第1ターミナル側のA滑走路と、第2ターミナル側のB滑走路の2本で運用がなされています。羽田空港のA滑走路とC滑走路の関係に似ていますが、羽田空港のように到着機の出発地によって滑走路が分けられているという運用はなされていません。成田空港のB滑走路が長距離国際線の運用にはやや力不足な2,500mという長さであることも少なからず影響しているように思いますが、B滑走路に南側から着陸するとターミナルまで時間がかかってしまうのが玉にキズです。

しかし、A380であればその心配もありません。A380は4,000mあるA滑走路のみでしか離発着を行わないため、第1ターミナル利用のスターアライアンスの航空会社であれば、着陸から到着までも非常にスムーズなのです。成田着便でスタアラ系のA380に搭乗するメリットはここにもありそうです。そんなところで成田空港のA滑走路には初めて着陸することになった私、空港脇にある航空科学博物館に展示されている飛行機群を見つつ進入を継続します。

7時間ぶりに地上へ

14:06、成田空港RWY34Lに着陸しました。飛行時間は7時間18分でした。長い長いフライトもこれにて終了。離陸前同様、主翼も上ではなく下にしなっています。燃料が減って軽くなったとはいえ、主翼自体の重量が重すぎるのか、普段搭乗している見慣れた飛行機とはまるで異なります。

飛行機はA4、A、W12、S誘導路を経由して第1ターミナル45番スポットへと入りました。定刻よりも30分早い14:15に到着、ブロックタイムは7時間46分でした。ホノルルを出てきたのが現地時間のお昼ですので、ホノルルは既に夜の8時前なのですが、日本はまだまだ明るい時間帯。長い1日はまだ終わりません。

エコノミークラスの乗客は、アッパーデッキのファーストクラス、ビジネスクラスの乗客の後に降機することができるということで、”ゆっくりご支度ください”というアナウンスが入りました。というわけでお言葉に甘えてのんびり支度していると普段通り殆ど最後の乗客になってしまいました。お世話になったCAさんにお礼を告げて今度はL1ドアから飛行機を後にしました。

ボーディングブリッジを通過し、改めて搭乗してきたA380を振り返ります。ホノルルではアッパーデッキにボーディングブリッジを接続している様子を見ることができなかったので、それも合わせて目に焼き付けました。

それにしても大きな飛行機です。コックピットウインドウからは手を振ってくださっているキャプテンの姿も見えているのですが、その姿が相対的に小さく見えてしまいます。サービス精神旺盛のキャプテンに他の乗客の方も気づき、手を振り返していました。

後は人の波に乗って入国検査、手荷物の受け取り、税関を突破して到着ロビーへと出ました。

この日はこの後羽田空港へ移動して秋田まで戻るというミッションが残っていたため、飛行機の遅延を考慮してリムジンバスを予約していました。しかし、定刻を通り越して30分も早着してしまったことに加え、偉大なるダイヤモンドメンバーの友人に荷物を預けてもらっていたおかげで、リムジンバスに課金しなくとも羽田空港まで余裕で帰還することができると判断し、この後は成田スカイアクセス線経由で羽田空港へと向かうことになりました。

改めて、早着運航と友人のステータスパワーに感謝申し上げます。

人生初のA380搭乗を終えて

これまでも、数多くの飛行機に初搭乗を果たしてきましたが、世界最大の○○という異名を持つ飛行機への初搭乗は、幼稚園児で記憶も曖昧だったジャンボ機以来17年ぶりのことでした。メインデッキだけですが、機内も一通り眺め、その大きさを身を以って体感することができたのはいい経験になったと思います。やはり4発のエンジンを積んだ大型機は最高ですね。

A380に乗った経験を踏まえて、改めてジャンボに乗りたくなりました

以上、初めてA380に搭乗した搭乗記でした。最後までお読みいただきありがとうございました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました