秋田空港から777が消えた9年間
2003年8月の時刻表を最後に、777の定期運用が消滅してしまった秋田空港。もちろん機材変更などでの飛来はあったものの、時刻表上への「772」の表示が無くなり、秋田空港にとって777は常連から珍客へと変わってしまった。

当時はまだ紙の時刻表が全盛の時代。毎月秋田空港のチェックインカウンターに置かれた時刻表を手に取り、秋田発着のページをドキドキしながらめくり、毎号毎号真っ先に目に入ってくる767-300を示す「763」「76S」「76P」の表示に、もう許してください!と心の底から思っていたが、今はもちろんB6大歓迎である。

2011年、東日本大震災が発生した。
太平洋側の地域での甚大な被害は記憶に新しいが、海に面していない地域を走る東北地方の大動脈・東北新幹線も大きな被害を受けた。困ったときには助け合いの精神で、陸路が完全に普及するまでは空路の需要が一時的に増加し、震災以降羽田ー秋田線の搭乗率は70~80%の高水準で推移した。

夏休み期間に入っても、復興需要の喚起やインターハイの開催などで引き続き高い搭乗率を保っていたためか、2011年10月の冬ダイヤから羽田―秋田線はANAとJALが揃って1往復増便し、過去最多の1日9往復体制になった。
増便の大元の理由を辿るとややすっきりしないのと同時に、増便してしまうと777の飛来がさらに遠ざかってしまうのではないか、と何とも言えない気分で過ごしていると、衝撃のニュースが飛び込んできた。

2003年以来、9年ぶりに秋田線へ777が定期投入されることを報じている。
つい1年前まで、767-300×3、A320×1だったANAの羽田ー秋田線が、なんと777-200×2、767-300×3へ大化けしてしまった。
もう10代も半ばを迎え、さすがにこれはやりすぎや、次の年にはA320に逆戻り、と思っていたのは言うまでもないが、スケジュールが出た以上、4か月は777が秋田で見放題となることは決まったので、777が来る時間帯を狙って何度も空港へ足を運んだ。





機材変更で来る777を狙え
そして翌2013年、もちろん秋田発着に「772」の文字はなく、その代わりに他の地方空港同様「78P」の表示が灯った。
ただ、2013年以降、国際線で活躍していた777-200ERの国内線仕様への改修が始まったこと、2015年からは、需要に応じて機材を柔軟に変更する「ピタッとフリート」なる施策をANAが始めたことなどを理由に、機材変更での777飛来のチャンスが増大した。(787のエンジントラブルの穴埋めを777が担っていたことも大きい)






観光資源は大切に…花(火)より777
全国花火競技大会(大曲の花火)が毎年8月最終土曜日に秋田県大仙市で開催される。花火の会場は、秋田空港からも車で40分程の距離にあり、空路で秋田入りし花火を鑑賞するという需要がある。
これまでもこの需要に合わせ、ANAでは羽田線を中心に機材の大型化を行っていたが、2017年からは開催日前後に777を複数便投入する大盤振る舞いを始めた。
満席の777が秋田に来る。

2012年の件や、当日の機材変更ではガラガラの状態で777を飛ばすことも多々あったように思われるが、需要と供給がマッチした、もっと言うと超過需要の状態でやって来る777を秋田で目にするというのは、楽しみでもあり、ある種の申し訳なさから解放されてホッとした気持ちにもなったことを覚えている。





この大曲の花火特需の777大量投入は、2017年以降定番となり、とうとう2019年の時刻表には、注釈上ながら再び秋田発着のページに「772」の文字が復活した。

8月31日は401-404便にも777が投入されたが、こちらはなぜか記載されなかった。
この翌年でANAの紙の時刻表は歴史に幕を下ろしたため、これが秋田発着と「772」の最後のコラボレーションとなった。






いくら人口減少が著しい秋田県でも、この大曲の花火さえあれば、777が引退するまで秋田でその姿を拝むことができるに違いない、これが確信に変わりつつあった2020年、777の現役生活をも脅かす、あのウイルスがじわじわと世界に広まってきていた…
まだつづく

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