小松空港の底力
北陸地方で最大の規模を誇る空港、小松空港。東京、札幌、福岡などの国内主要空港との路線はもちろん、ソウルや台北などの国際線や、ヨーロッパはルクセンブルクまでの国際貨物定期便も有する地方空港らしからぬ一面も持つ空港です。

そんな小松空港ですが、就航路線の中で最も利用者数の多い羽田線で、北陸新幹線と競合しています。2015年に北陸新幹線が金沢まで延伸したことで、その利用者数は激減、そして追い打ちをかけるように2024年3月、新幹線は福井県の敦賀まで延伸されました。

金沢、そして福井と空港の利用圏内に新幹線が進出し、厳しい戦いを強いられている小松ー羽田線、小型機での運航も目立つようになったこの路線ですが、今でも時々大型機が投入されます。今回は、小松ー羽田線の2000~2010年代の主力機「ボーイング777」で早春の北陸を目指しました。
機材変更でまだまだ狙える!小松トリプル
現在ANAが1日4往復、JALが1日6往復運航する小松―羽田線。今回777が投入されたのは、羽田発のANAの始発便、ANA751便と折り返しの754便です。スケジュール上では194席仕様のA321がアサインされていましたが、この日は777-200(405席仕様)で運航されることが数か月前から決まっていました。

同じ時間帯の羽田ー広島線と機材を交換して、小松線に777を投入するようだった。
今回は羽田発の751便に乗ることにしました。シートマップを見る限り、この便に関しては777はオーバースペック。A321でも余裕で乗り切れるくらいの席の埋まり方ではありましたが、機材変更することなく777で向かうことができるということで、早速保安検査を通過しました。

ANAの国内線では最大の規模を誇る777シリーズの運航便ですが、この日の751便はバスゲートからの出発でした。アサインされた505番搭乗口からバスへ乗り込み、春休みを満喫中の大学生やビジネスマンの方々に囲まれながら一緒に搭乗機の元へ向かいました。
大迫力!目の前にトリプルセブン

バスに揺られること数分で509番スポットへやってきました。やはり間近に見る777の迫力は凄まじいことこの上ありません。小松空港へ777で向かうことが今回のテーマですが、搭乗前に短時間で777を舐めまわすように激写することも忘れてはいけません。




機内へ入ります

欲を言えばずっと撮影タイムでも良いのですが、そうも言ってはいられません。タラップを上って機内へ入ります。

今回は後方窓側の36Kをアサインしました。丁度後方のカーゴドアの上の席で、搭乗時はまだ貨物の搭載作業が行われていました。ほどなくしてこちらのドアも閉まり、出発準備が着々と整っていきます。

8:46、トーイングトラクターに押され、スポットを後にしました。
プッシュバック中には、開業を数日後に控えた第2ターミナルの増築部分をじっくり眺めることができました。
2018年に第2ターミナルサテライトとして開業してから約5年、真新しいボーディングブリッジに綺麗なエプロンを見ると、また羽田に新たな歴史が刻まれるのを目に焼き付けているんだな、と感慨深いものがありました。

777の仲間に見送られながら離陸滑走路であるC滑走路へ向かいます。写真の777-300はANAの国内線機材の中で最も大きな機材。
エンジンが2つの双発機ながら、500席以上のキャパシティを有するため、ジャンボ機を補完する存在として、高需要ローカル線でもお馴染みの存在でした。羽田ー小松線にも例外なく投入されたほか、新千歳―小松線にも定期便で投入実績があります。

羽田空港の発着枠が少なかった2000年代中盤までは、ANAでは面白い機材運用が多く見られたように思います。
小松空港へ向けてていくおふ

C滑走路、RWY34Rから離陸しました。
羽田ー小松線の飛行経路は、往路と復路で大きく異なり、往路は羽田空港を離陸後、斜めに一直線に北陸へ向かう航路をとります。一方、復路は、小松空港を離陸後名古屋上空を経由し、太平洋上に出て羽田を目指す、反時計回りのような航路をとります。(空路の混雑状況や天候次第では、北関東上空を通過して北から羽田へ向かう場合もあり)

と言うわけで、荒川上空を通りながら高度を稼ぎつつ、針路を北西方向へ向けていきます。離陸後4分で見えてきたのは埼玉県川口市の街並み。真横へ走る高速道路は、東京外環自動車道です。
北国らしい景色を見ながら北上
関東平野を越えると、暫くは山岳地帯の上空を通過します。
この路線では、特に日本アルプスの一番北、飛騨山脈の上空を突っ切るように飛行する他、群馬県や長野県の県境付近の山々を眺めながらのフライトになりますが、いかんせんこの日は雲が目立つ天候で、迫力ある山々の景色とは無縁の上空散歩になってしまいました。


そんな中でも所々雪に覆われて白くなった下界が顔をのぞかせると、北上していることを実感させられました。
top of descent

松本市上空付近を通過してまもなく、いよいよ降下が始まりました。ここまで離陸からわずか24分。本当に東京から北陸はすぐなのです。
やや遠回りに線路を引いて開業した北陸新幹線も、東京ー金沢間の所要時間は2時間半というのも改めて納得しました。

この日の小松空港の天候は雨。いかにも日本海側らしい空模様のようです。降下中もずっと雲に入ったまま抜け出すことができず、モニターのマップやFlightrader24の地図が頼りの状態がしばらく続きました。
日本海側らしい天気の北陸へ

小松空港の滑走路へ機首を向けて数分が経った9:40、ようやく下界の景色を捉えました。洗剤メーカーも驚く圧倒的な白さの白波、間違いありません。ウインターシーズンがまだ明けていない日本海の白波です。
ここから着陸まではやや風に煽られながらのアプローチとなり、小松×777という名誉ある1日のはずが、最後の最後にキツイ洗礼を受けながら着陸の時を待ちました。

9:44、ウェッティーな小松空港の滑走路へ着陸しました。フライトタイムは45分でした。
着陸滑走路のRWY06へ進入する場合は、東京からだとやや遠回りになる下り方をするため、反対側のRWY24へ着陸する場合よりも飛行時間が延びがちです。

到着したのは7番スポット。ANAの羽田線と言えばこちらのスポットに入ることが多いようです。
乗客が少ないため、L1ドアのみボーディングブリッジが接続された、と言いたいところですが、この7番スポットに以前あったL2ドア用のボーディングブリッジは、撤去されてしまったようです。この話を聞いた時には、寂しい気持ちになりました。

丁度ターミナルビルのガラスに777の顔が反射していました。「小松空港に777が来た」何よりの証拠だ、と写真に収めて到着ロビーへ向かいました。
「空路」対「陸路」の在り方の変容

北陸新幹線金沢延伸から10年、敦賀延伸から1年を迎えてもなお、機材変更とはいえ大型機の777が投入される小松ー羽田線の様子をご紹介しました。上述の通り、東京ー金沢間の新幹線は、最速便で2時間25分。これまで、新幹線が新規開業し、その所要時間が2時間前後の場合、空路は撤退に追い込まれるケースが多々ありました(東京ー花巻、仙台、山形、新潟等)。
一方、2015年と比較的最近開業した北陸新幹線と対抗する空路、羽田ー富山線、小松線は大きく影響を受けつつも路線が維持されています。航空会社や地元自治体の努力の賜物であることに間違いはありませんが、災害や予期せぬトラブルなどのリスク要因が増える昨今、複数の選択肢を持つこと自体がリスクヘッジになるという考えの変化が路線維持のモチベーションの根底にはあるのではないでしょうか。

新幹線開業前のまさに「ドル箱」時代とは打って変わって、減便に機材小型化と依然と比較すると厳しい環境に置かれている小松―羽田線。対東京の公共交通機関の選択肢の一つとして、そして、羽田経由で全国、世界へつながる北陸のビジネス、観光を支える要として末永く運航が続くことを願っています。
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