767に飽きていました だがしかし…
セミワイドボディ。2-3-2の座席配列で両隣に人が来るケースが少ない。CF6-80の元気なエンジン音(もちろんJT9Dも良いです)。ドッカン上がり。短距離国内線から太平洋横断までなんでもこなすバイプレーヤー。
魅力を上げればキリがないBoeing 767だからこそ、787やA350全盛の2020年代になってもコアなファンからの絶大な人気があるのは言うまでもありません。
そんな767ですが、個人的には正直かなり飽きていました。
こちらは、2010年代の私の搭乗録の一部です。よく搭乗していた秋田―羽田線の主力機だった767、「今回は777に機材変更を…」「そろそろ777に機材変更を…」機材変更を何度も願っていたのは言うまでもありません。秋田発着路線以外では、極力別の機材に乗ろうと意識さえしていました。
それだけ秋田では当たり前すぎる存在だった767ですが、A321へのリプレースやコロナ禍による需要減少で一気に姿を見せなくなりました。
寂しい。
失ってから初めて気づくって大正解ですね。
2022年8月、繁忙期の秋田空港に久しぶりに旅客便として767運航便が帰ってきました。昨年と今年発生した、東北地方太平洋側を震源とする地震により、新幹線が不通となってしまった救済としての飛来などもありましたが、「イレギュラー事案が全くなく、767のキャパシティーが求められての飛来(この定義づけもより分かりませんが(笑)」は本当に久しぶりです。気づいたら体が勝手に発券していました。
767 やっぱり乗るなら 悪天候
8月3日、朝から雨が降りしきる秋田空港に767がやってきました。今回搭乗するのは9:30発の羽田行ANA404便。
767に乗れさえすれば天気も便名も関係ないのですが、やはり雨の日の767搭乗はテンションが上がります。分厚い雨雲を一気に上昇して突っ切って、青空とご対面するのが搭乗前のタイミングから楽しみです。
保安検査場を通過して制限エリアへ。ゲートの前から窓越しに見る767、やっぱりいいですね。
「おら、東京さ行くだ」って感じがします。737やA320シリーズだと、ちょっと違うんですよね…
因みに、我がANA404便の45分前には、同じく羽田行きのJAL162便が設定されているのですが、機材整備で大幅に遅延していました。「ANA便への振替も承ります~」とのアナウンスがあるかと思えばそうでもなく、お先に失礼する形となりました。
9:20過ぎ、搭乗開始のアナウンスで機内へ向かいます。秋田空港の3番ゲートのボーディングブリッジから767の機内へ入る。これまでの当たり前を噛みしめるように足を進めます。
2-3-2の7アブレストの座席が奥まで続くキャビン。これぞ767です。767自体は、国際線仕様機に今年も2回搭乗してはいますが、国内線仕様の青いRECAROシートが並ぶ光景は、実家のような安心感があります。
今回は後方の37Aをアサインしました。羽田からの往路便はかなり混雑していたようですが、復路便となるこの便は比較的空いており、後方区画はかなり快適に過ごすことができるだろうという判断です。
イアホンが変わっていました
767を耳で楽しむ点では、エンジン音や各動翼の作動音、ギアの上げ下げなど様々なエンターテインメントが用意されていますが、取り敢えずオーディオ用のイアホンも貰いました。
これまでのものと比べるとだいぶカラフルになり、包装には「MADE IN P.R.C.」の文字。CHINAじゃダメなのでしょうか(笑)
いよいよ出発
定刻1分前の9:29にドアが閉まった我が767、楽しい楽しい雨のフライトの始まりです。face eastでプッシュバック後エンジン始動、タキシング中にコントロールチェックを終えて準備OK、滑走路へと入ります。
9:42、短い滑走の後空へと舞い上がりました。少し上昇するだけですぐに雲に捕まり、予想通り上下左右への揺れをお見舞いされました(笑)
この状況で席を立つ方はいらっしゃらないとは思いますが、雨雲恐るべしです。ベルトサイン点灯中は席をお立ちになりませんよう…というのは口を酸っぱくしてもしきれませんね。揺れている時は、ひたすら体を飛行機に合わせて揺らしているのが一番です。
秋田から羽田へ向かう際は、離陸後左右どちらかに旋回して南を目指していきます。しかし今回はなかなか旋回する兆しが見えません。かなり激しい雨雲が南に鎮座しているのかと思い、離陸後5~6分でフライトレーダーをのぞいてみると…
気づいたらとっくに旋回していました。雲の中や夜間の飛行の際に陥ることがある空間識失調ですが、このような場合は本当に計器が頼りであると実感しました。曲がっている感覚は皆無でした…
青空がいつまで経っても現れません
と言うわけで、無事に南下を始めた我が767ですが、一向に雲を抜ける気配はありません。高度はそれなりに稼いでいるはずですが、窓の外は真っ白です。
フライトレーダー上で自機の位置が山形上空を指し始めた9:54、「間もなく気流が安定した高度帯にたどり着く」とコックピットからアナウンスがありました。この時既に高度は30,000feet、767以外の機種であれば水平飛行に移るような高度ですが、もう少しだけ上昇するようです。
9:58、ベルトサインが消えました。(写真はまだ点いていますがw)とにかく早い飛行機、離陸から16分で福島市上空までやってきました。対地速度880km/hでひたすら南下していきます。
国内線で活躍する元国際線仕様機
ここまであまり触れてきませんでしたが、今回の搭乗機は、Boeing 767-381ER(JA617A)でした。2008年9月導入、機齢は約14年です。
2009年に導入されたJA618Aが、ANAのウイングレット非装備の767としては最終導入機ですので、比較的新しいイメージを持っていたのですが、2008年が14年前と言うことに驚きを隠せません。
導入当初から国際線仕様機として活躍していたJA617Aですが、国内線仕様に改修されたのは2019年秋。この改修でウイングレット非装備の767の改修は最後となり、国内線仕様としては最も新しい767がこのJA617Aとなっています。
福島県郡山市を横目に飛ぶ我が767、フライトも後半戦に入ります。
なお、巡航高度は32,000feetだったのですが、この時点で既に降下に入っています。水平飛行していたのはわずか6分。まさに「上がってすぐ下りる」の体現です。
東北地方上空と比べると気流の良さは雲泥の差、降下を始めてもベルトサインが点くことはありませんでした。機内中央のラバトリーへも潜入です。
このJA617Aと同じ仕様で国際線を飛んでいた767へは1度しか乗ったことが無いので、比較できないのですが、国内線を飛ぶにはオーバースペックな全身鏡が用意されていました。国際線仕様時代の名残でしょうか。
JA617Aを含む、「CLUBANA Asia」のビジネスクラスシートを搭載していた767は、基本的な活躍の場をアジア域内に持っていましたが、晩年は羽田―バンクーバー線の運用にも入っており、この鏡もそれなりに役に立つシーンがあったのかもしれません(笑)
もちろんANA運航便ですが…
福島県上空に入ってようやくベルトサインが消えましたが、ドリンクサービスはしっかり行われました。CAさんの手際の良さに通路が2本の767という好条件が揃ったのが功を奏したに違いありません。
担当のCAさんは、以前ANAWINGSに出向されていたようで、ボンQのステッカーを頂きました。767のキャビンでこのステッカーをいただくことになるとは思いませんでした。安全のしおりと一緒に撮ればよかったです。完全なるエラーです。
取り敢えず安全のしおりも載せておきます。このフライトの中で撮ったものです。信じるか信じないかはあなた次第です。
お天気の関東地方に入ります
降下中もやや厚い雲に捕まりましたが、フライト前半とは比較にならないほど揺れとは無縁の時間が過ぎていきました。
雲を抜けるとそこに現れたのは霞ケ浦です。
日本で2番目の大きさを誇るガウラ―、北から羽田へ向かう便からは、地図とは逆方向から眺める形になります。物事の見方を変えると様々なことに気が付くって言いますよね。ガウラ―は逆から見てもガウラ―ですが。
東北地方とは打って変わって天気に恵まれていた関東地方。下界の様子もよく見ることができました。
筆者選出「空からよく見るけど実際に行ったことが無い場所ランキング」第130位の千葉ニュータウン。中央を貫く北総線の線路の両側に広大なニュータウンが広がっています。せめて駅の外には一度出てみたいものです。(多分出ることはなさそう)
この日の羽田空港は夏らしく南風運用。着陸滑走路はD滑走路、RWY23です。羽田空港周辺に設定された「D」から始まるウェイポイントを通過して滑走路へと向かいます。
767との楽しい時間も終わりが近づきます
飽きることなく見続けた767の主翼とももうすぐお別れ、東京湾上空へやってきました。この後、再びフラップが展開され、ギアが下げられ着陸への準備が整っていきました。
767の主翼と言えば最後に1つ、アウトボードエルロンとフラップの間にある燃料投棄用のフューエルダンプノズル。離陸直後のトラブルで燃料投棄が必要になった際には、ここからジェット燃料を放出します。
ANAの767では、国際線で活躍する-300ERや-300Fにはこのノズルが装備されているのですが、国内線での運用がメインとなる-300には装備されていませんでした。同じ国内線仕様機でも787や777には装備されていることから、このノズルですら以前は憧れの的だったのを思い出していました(笑)
国際線仕様からの改修組の-300ERでは、そのままノズルが残った状態で国内線に投入されているため、今ではすっかりお馴染みの存在となりました。
そうこうしているうちに東京湾を横断し、着陸は10:30、767と一緒に飛ぶ48分のショートフライト、ここに完結です。スムーズな減速で毎度御用達D-5誘導路からD滑走路を離れます。
D滑走路の島から移動すること約5分、青い翼のホームグラウンド、第2ターミナルが見えてきました。
只今の時刻は10:35、本来であればヨーロッパやアメリカ東海岸へ向かう777がひしめいていたであろう2タミ南ピアもご覧の通り、A320と737が仲良く出発準備中。右側のA320neoはもちろんウラジオストク行きではありません。
コロナ禍で就航直後に運休となってしまった成田ーウラジオストク線。コロナに続いてロシア政府が非人道的行為を始めてしまったおかげで、モスクワ線共々先行き不透明になってしまったのが残念でなりません…
だいぶ話が脱線しましたが、到着スポットは、第2ターミナル中央の59番スポットでした。
これまでは767以上の大型機、中型機の使用に限られていた所謂「ターミナル正面」のスポット。コロナ禍でA320シリーズや737が使用するシーンも見られるようになりましたが、地元空港からそこそこ大きな飛行機でターミナル正面に着くのは本当に気分が良いですね。
69番(敬称略)などに着いた日には、メンタルの回復に数時間を要してしまいますから…
ありがとうJA617A
名残惜しいですが降機のお時間となりました。ボーディングブリッジの脇からNo.1エンジンを見ると、中央部に渦巻が入っていました。記憶が正しければ、2016年頃から一部のCF6-80エンジンに渦巻が入れられるようになっていますが、あまり普及していないのか渦巻への遭遇頻度は低めです。
このJA617Aも渦巻はNo.1エンジンのみで、No.2エンジンには描かれていませんでした。
THE Haneda の光景
到着コンコースから乗ってきた767を振り返ります。隣の58番スポットには6月に運用復帰したPW4000エンジン装備の777、更に隣には767と羽田空港第2ターミナルらしい光景が広がっていました。
ここに747がいればもう完璧なのですが姿が見えません。どこに行ってしまったのでしょうか。探す旅に出たいと思います。
最後に
2019年11月ぶりに、秋田ー羽田線で搭乗した767。秋田発着便ではご無沙汰だった767ですが、今回に満足することなくまた次を狙っていきたいと思います。諦めない気持ちでこれからも頑張っていきたいです。
<flight data>
flight.No ANA404 ship Boeing 767-381ER registration JA617A seat 37A
STD 9:30 ATD 9:32 take off time 9:42 departure spot 3 take off RWY28
STA 10:40 ATA 10:38 landing time 10:30 arrival spot 59 landing RWY23
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